中学受験  青葉に「桜」を思う

枯れかけてはよみがえり、あるいは、折れた部分から芽吹き、力強く伸びる山高の神代桜(山梨県北杜市・実相寺)。13メートルの太い幹。2000年の命をつなげる。強い生命力を持つ桜ではあるが、その樹勢回復には人の手が必要だと言う。枝に茂る青葉の勢いを見て、それに対応する根の様子を推し量る。葉つきの悪い枝を回復させるには、根をいたわりつつ養い、伸ばさなければならない。丁寧に木の周辺を調べて根の張り方を分析し、土壌の入れ替えを行う。酸素を取り込みやすいように、硬い土を丁寧にほぐし、肥料をやり・・。根を養うことが樹を養うこと。

桜の青葉を見て、子どもたちを想う。すぐに花が咲くこと、だれよりも早く咲くことを望むのではない。他の木と比べるのではない。枯れかけたら水をどんどんやればよいのではない。
 成績が不安定になったときは「樹勢の回復工事」が必要。こどもの学習の足跡を丁寧に観察し、分析をする。何が不足していたのか、どの単元の基本が抜けていたのか。ここは親の出番。励ましの言葉だけではなく、工事を請け負うという気持ちで、身をもって守り、導いてあげる。子どもが解いた足跡を丁寧に見て、ミスの原因を一つだけでもよいから探す。根はどうか。水や肥料を与えすぎて疲れさせていないか。風通しはよいか。
 迷った時にはあれこれ新しいものに手を伸ばすのではなく、目の前の一つのものを正確に丁寧にやる。この単元の基本を本当に吸収できているか。根がしっかりと張ったのだろうかと気づかう。
 基本を定着させずに応用を要求すれば、伸びかけた根は成長を止める。「この前できたでしょ!」でも、根がしっかり張っていなかった。急がずに、丁寧に根を見て。根の張った枝には花が咲く。

では、学年別に簡単なアドバイスを。

5年生、6年生>

この時期には成績が上のクラス、高い偏差値をとることを目的とするのではなく、基本の定着を徹底させる。量に追われる勉強をすると夏休み明けに成績が下がる。6年生の秋以降の志望校に合わせた学習をスムーズにするためには、ここでひと踏ん張りが必要。国語の基本は丁寧に読むこと。漢字、知識はしっかり。

3年生、4年生>

一人で勉強する習慣と、読書の習慣をつける。読書が嫌いならば積極的に読み聞かせをする。生まれてからまだ10年。あたたかい親鳥の羽のもとで、ぬくぬくと充分に育む。目には見えないが、安定した情緒は子どもの性格、生活、さらに学習の土台となる。根を育てることが樹を育てること。           

                       読売ウイークリー カリスマ講師の教え 第6 07.06.10