不安のピークを迎えたいま・・・

 大手塾の3回目の模擬試験が終わる6年生の11月〜12月は、「不安のピーク」と言われる10月に比べると、親のほうは少し肝が据わったという状況になります。ところが、家庭教師としての経験から申しますと、 親の前では「大丈夫だと思うよ」、「落ちる気がしない」と平静を装っているこの時期の子どもたちの多くは、実は押しつぶされそうなほどの不安で一杯になっているのです。

 授業のために部屋に入るとドアをきっちり閉め、いつになく真面目な様子で椅子に座り、「先生、僕、大丈夫かなぁ。合格できるかなぁ。」と静かに聞いてきます。「大丈夫よ」という無責任なことばは言えません。「どうしてそう思うの?」と尋ねると「国語ができないから」と言います。「どんなミスをしているのか、徹底的に調べて対策を立てる?」と問いかけると力強く、素直にうなずきます。
 この時から初めて受験に対して「本気」の授業が始まります。もちろん秋口からの授業ではミスの分析とその対策を中心としていたのですが、子どもたちは、そう真剣には受け止めてはいなかったのです。
 模試を見直してミスの原因を自分で考えさせ、大きめの紙に赤のサインペンでそれを書かせます。「書き抜きができない」というあいまいな書き方ではなく、「写しミス」、「設問の読み取りミス」、「本文の傍線の後の文章を読まなかったための強引な解答」、というように具体的に書き出します。同じミスをしたらミスの分析表の上に×を大きくつけて、きちんと「しまった!またやっちゃった。」と思わせます。この時期だからこそのやり方です。必ず直ります。あきらめずに、怒らずに、「またやっちゃったわねぇ。」と付き合ってあげてください。
 国語は苦手という意識を持ちながらあいまいに向かっていた読解問題も、「このパターンのミスさえしなければ大丈夫」ということがわかると真剣に取り組みます。文章に真摯な気持ちで向き合った時には、文章も設問もはっきりと頭の中に入っていくものです。そして、今までどうしても乗り越えられなかった「時間が足りない」という課題もいつのまにか解決していきます。

 合格後、お母様方に終盤2ヶ月の子どもたちの不安をお伝えすると、「そうですか。知りませんでした。そんなに不安に思っていたのですか。やる気があるのかないのかわからなくてハラハラし通しでした。」とおっしゃいます。
 このやり方は家庭教師だからできるという難しいものではありません。どうかお母様方も子どものミスの分析をして、「これだけは正してあげたい」点をはっきりさせ、明るくテンポよく後押しをしてあげてください。もう少しの辛抱です。受験のその日まで子どもたちは確実に伸び続けます。

                   読売ウイークリー カリスマ講師の教え 第31  2007.12.9