入試前の最後の準備      

 6年生にとっては、長い時間をかけて、いろいろな角度から準備してきたことが、統合される時期となりました。緊張感の裏に、一筋の清々しいものが流れているのを感じます。不安の陰に、「よくがんばってきた」とそっとささやく声も聞こえます。

 12歳の子どもたちに伝えます。
 本当に一生懸命勉強しました。あなたたちも本気になったのですね。「本気」の意味がわかったことでしょう。今まではとてもできなかったことも、この23ヶ月でできるようになりました。やればできるということを知りましたね。12歳のこの時期に一つの試練を迎えることは、長い人生の階段を力強くのぼる「はずみ」になります。自分なりにたくわえた力を、自分らしく精一杯表していらっしゃい。そばについてあげることはできないけれど、何人もの心があなたたちを見守っています。応援しています。

 保護者の方にお伝えいたします。
 この時期の学習では、できない問題をわからせようとすることよりも、むしろ理解しているはずのものを確認することのほうが大切です。国語では漢字、慣用句、敬語の確認をします。勘を鈍らせないように読解は過去問を繰り返しやります。
 日常生活では、緊張をあおって消耗させないように心がけ、子どもたちが入試当日に全力を出せるようエネルギーを蓄えさせてください。それには、今までよりも十分に睡眠をとらせることが必要です。 また、規則正しい生活をさせるために、きちんと通学させます。家庭にこもって受験一色にしても、大学受験ではないのですから、ストレスはたまるばかりです。小学生は小学生らしく、当たり前の日常生活をさせましょう。そのくらいの気持ちで入試を迎えなければ、試練と向き合うことはできません。
 入試当日は、親の緊張をすっかり隠して、堂々とさわやかに親子で志望校に向かいます。試験会場に着くと、子どもたちは親に手を振り、そして振り向かずに一人でしっかりとした足取りで入っていきます。もう伴走はできません。けなげな小さな背中に思わず涙がこぼれる瞬間です。 
 子どもたちには「頑張って」という空元気を誘うことばではなく、「しっかりね」と、自分自身の心を確かめられることばをかけてあげたいものです。
 本当は、親はもう何も心配することはないのです。長時間の試験にも耐えられるように、塾でも家庭でも心身ともに力をつけてきました。控え室で静かに試験が終わるのを待ちましょう。

               読売ウイークリー カリスマ講師の教え 第36回  2008.1.20