「音読をしながら、印つけとメモ書き」   その定着までの過程について

2004年にHPを立ち上げましてから、3年が過ぎました。
当初の「国語の学習法」には、設問から先に読むことを述べております。
2008・11変更
また2006年の「読解トレーニング」ではトレーニングの段階を3段階に分けております。

毎日の試行錯誤の結果、あるいは、子ども達の精神の変化をじっと見た結果、このように指導法が少しずつ矯正されていきました。

今までのまとめとして、200611月出版の、「お母さんが教える国語」(ダイヤモンド社)では,「音読をしながら、印つけとメモ書き」1、2とし、段階を踏んでの読解問題への取り組み方を著しました。

果たしてこのやり方で間に合うのだろうか、時間が足りなくなるのではないだろうかと、多くの方からご質問をいただきます。たしかに入試問題の長文を読解することは、国語を苦手と思っている12歳の子どもたちには難しいことです。

しかし、文章を読まなくては何も始まりません。設問を見て、字数を合わせて答え探しをしても何の力も付きません。1012歳の子ども達の、2年間以上に及ぶ受験のための読解練習の時間が、「子どもの心の成長、および、読み取る力」にきちんと結びつくように考えてまいりましょう。

先へ先へと文字を追っては答え探しをする「くせ」から抜け出し、「丁寧に読む習慣」をつけるにはそれなりの時間が必要です。一週間23回、一回3040分の練習で3ヶ月はかかるものと思います。

このやり方が定着するまでの段階では、成績は下がります。クラスも下がることもあるでしょう。ここを辛抱して何とか乗り越えると、初めて「読めた」と実感する日が来るのです。多くの場合「一時期成績が下がり、低迷し、急にぐっと伸び、その後定着する」というパターンをたどります。

本の139140ページ、また、第9章にも書きましたが、定着するまでの期間は親子共に不安で、投げ出したくなることもあることと思います。でも、どうぞもう一歩辛抱して継続なさってください。

「読み解くスピード」に関しては、志望校合格を意識し、子どもの集中力が高まる6年生の11月頃から次第に解決されます。どの子も集中して時間内に解けるようになっていくのです。その時期までは、どうしても辛抱が必要です。

それまでは、丁寧に読ませるために、徹底して「印つけとメモ書き」の練習をなさってください。だらだら線引きをするのではなく、ポイントに印つけをします。また、忘れないようにメモ書きも、ちょこっとします。

たとえ、すぐに点数が上がっても、そうそう定着はしませんので、しばらくは目を離さないでください。しかし、「国語を何とかしなくては」と、子ども自身がはっきりと自覚して練習をした場合には、見事な集中力で、読み方を短期間で定着させていくこともあります。

今回はメールをいただきました「お母様からのご報告」を2件掲載させていただきます。お二方とも、掲載を快くご了承くださいました。

@不安をお持ちになりながらもくじけずに継続なさり、定着しつつあるという6年生のお母様からのご報告です。


先生のご本が出版されたのが、奇しくも私共が、下がり続ける子どもの国語の成績に焦りを感じ始めたのと同時期でした。

11月より親子で国語の学習を始め、印をつけながらの読解を開始させたところ、子どもは12月のテストでは、見事に入塾以来最低の成績を記録しました。「本文が半分も読めなかった!これでは上位クラスに行けない!」と、本人は荒れていましたが、それでも「印つけを続けなさい」と、親の方は余り動じずにおりました。

それから少し持ち直したものの、また横ばい。「もう印つけるのやめようかな。やったって上がらないんだもん。」とぼやかれたときには、私も少しだけ心がぐらつきました。しかし、葛藤の末にもやり方を続行することに決めました。

その結果、今年の2月には大きなテストで初めて最高点をとり、それ以来、基礎の読解問題はほぼ同じ点数を保っています。月に一度のテストも、今年になってようやく「60の壁」を越えることができました。

子どもも、「早川先生の予言どおりだ」などと脱帽の様子で、つい数ヶ月前までしていた読み飛ばしは今や過去のものとなってしまいました。
幼い頃より、どう仕向けても本嫌いであった子どもが、中学受験の国語学習が功を奏し、徐々に活字に向いていることを、とても嬉しく思っております。 (以下略)
























A入試まであと2ヶ月、このHPに出会い、1211日から「印つけとメモ書き」をなさった方のメールです。子どもが本当に困ったとき、はっきり「何とかしなくては」と自覚を持ったとき、大きな力が出るということを経験なさったお母様のご報告です。

入試までの二ヶ月間、読み方を正し、毎日一心に練習した結果、志望校に「合格」なさいました。


12月11日の相談メール

・・・9月から下り坂な成績、不安定な国語の成績に不安でいっぱいです。毎日あんなにがんばっているのに、と思うと切なくて仕方ありません。あと2ヶ月ですが、先生の方法を始めても大丈夫でしょうか。

国語の寺子屋の回答


このままでは不安は解消されません。どうぞ勇気を持ってはじめてください。
選択肢の○・×・△はお始めになったのですね。
本文も「印つけとメモ書き」をしてください。

物語文は気持ち言葉に+・−・△(+−以外のもの。不思議・?驚いた・!にしてもよいでしょう)をつけ、気持ちの変化したところ、そのきっかけになったできごとを押さえます。

説明的文章は、話題・意見・結論・例(説明)と印をつけ上にメモをしておきます。常にこの段落は何について書いてあるのかを考えながら読みます。そして、「何について」がはっきりしている段落の余白にメモ書きしておきます。問題を解くときにどの段落に戻ればよいか分かりやすくなります。
頭の中にある問題文を、自分の目に見える形にしましょう。素早くメモ書きをすれば時間もかかりません。

どうぞ「印つけとメモ書き」をお始めください。
お子さんが本当に切羽詰った時にはすぐに身につきます。毎日やれば2週間で上向きになります。
チョッと弾みがつけば上昇気流にのります。
どんと腰をすえてなさってみてください。

漢字・知識は仕上げましょう。過去問でのミスはお母様がノートに書き出し、折にふれ出題なさってください。定着しにくい漢字は、大変大きく書かせて覚えさせます。今日のミスはきちんと覚え直しをして、次の日の朝もう一度チェックをします。

2月の合格のご報告

・・・さて、あれから徹底して「印つけ」をおこなったところ、特に選択問題の正答率をかなり上げることができました。
入試後、志望校3校とも主人が素人判断ですが採点をしてみたところ、4教科の中では国語がかなりできたようです。本人もそんな手ごたえがあったと、言っておりました。
12月11日、あの時、勇気を出して相談させていただき、「印つけ」の徹底をしたのがよかったと・・・  (以下略)


音読と手作業で「読む」ことを知った子どもたちは、「文章を読むことは楽しいこと」に気がつきます。読解問題の文章は物語文、説明文、論説文、随筆文、それに詩と、多岐にわたります。受験のための学習をすることで、ジャンルに偏りがなく、質の高い文章を読むチャンスが与えられるのです。問題文として切り取られた文章であっても、読み方次第で子どもの成長に大きくかかわります。

何より、読み方を知った子どもたちは入試当日、志望校の問題を、喜んで、楽しんで読みどんどん解答していきます。まさに風通しの良い頭と心を持って文章に向かうのです。
「国語、できたよ!」と、問題文の内容まで伝えてくれます。数ヶ月前、あるいは、一年前、不安な気持ちで文章に向かっていたことなどすっかり消え去っているのです。


どうぞ、この日が必ず来ることを希望の光として、今一歩の辛抱をなさって、親子の読み合わせをお続けください。

                                 2007/05/07