5月1日に福島で開催された大村はま先生の講演会に、東京から参加させていただきました。テレビで先生のお話を初めて伺った15年前、その日から先生の御著書に支えていただきながらこの仕事を続けて参りました。指導に行き詰ると迷わず先生の御著書を読み、心を新しくして子どもに接して参りました。 ご尊敬申し上げる大村先生の講演会が今回開かれることを知り、いの一番に申し込みをいたしました。
「本に聞き、本と語りつつ」の演題で、先生ご自身のお育ちになった環境、本から与えられたもの、学問への姿勢、また、ご自身の97年を振り返られて、幼い日々、あるいは少女時代の思い出とともに、そこで培われたものをわかりやすくお話しくださいました。特に、聖書を読むことで多くのことをお考えになり、心を動かされたことをお話しくださり、詩篇の暗誦もなさってくださったことで、先生のお人柄を近くに感じさせていただくことができ、本当にありがたい時をすごさせていただきました。
先生ご自身の「読書生活」について、このように語られたのは初めてでいらっしゃるそうです。感激すると同時に、何かほんわりとあたたかい空気に包まれたような気がいたしました。
「生活そのものが本」であったとおっしゃるほどの読書生活、また「青年期は一人で過ごす」という姿勢での幅広く、深く、熱心に取り組まれた学問、そして、聖書をお手元に置いていらしたというお心からあふれる、あたたかく、謙虚なお人柄に、お話を伺う中であらためて強く感じ入りました。
また、決して上からものをおっしゃらないばかりか、「人から何か言われやすいように、そして、それを『ああ、そうなのかな』と考えることができるように」と過ごしていらしたことを伺い、自分自身を振り返って反省するとともに、心に銘じもいたしました。
先生の澄んだ良く通るお声は、97歳のご高齢とは思えないほど力強く、2時間近い講演をお疲れのご様子もなくすごされましたことにも感激いたしました。
石川台中学での教え子でいらっしゃる苅谷夏子さんとご一緒に、各地で講演をなさっていらっしゃるとのことですが、会場でも車椅子を押されたり、マイクのお世話をなさる苅谷さんのご様子は、「教えることの復権」(ちくま新書)の中の、何十年も前の「先生と夏子さん」のお姿と重なり、ほのぼのとした穏やかな気持ちを私たちに感じさせてくださいました。
今般、大村先生に直接お目にかかりお話を伺いましたことで、今まで私の心の中にありました先生のお言葉の一つ一つが、いっそう生き生きとはっきりとし、ゆっくりと私の中で歩き始めるような、そんな気持ちがいたしております。
また、まだまだ学ぶことができる、あと40年もあると背中を押してもいただきました。
寺子屋としての、また、私自身の歩む方向をはっきりと示していただいた一日でした。
2004年5月