@語彙について
先日、ある掲示板に「語彙」不足のため国語の点数が伸びないというご質問がありました。それに対して、私なりの考えを書きましたものを、ここにコピーいたします。
「○○様のお子様の、国語についてのご心配ごとについて、私の考えを書かせていただきます。
文面からは元気が良く、勢いもあり、しかし、少し面倒くさがり屋さんのお子さんの様子が読みとれます。
読書が一番ではありますが、子どもによっては好きなところだけを読み、あとは飛ばし読みをしていることがあります。ですから読書量よりも、読むことの質を高めることのほうが必要でしょう
それには、常識を身に付けるため、あるいは社会の学習のためにも、新聞を音読なさることをお勧めします。難しいものではなく、短めでわかりやすいものを選んであげてください。たとえば今日の日経新聞の夕刊の「イラク拘束事件」(200字ぐらい)を読むとすると、イラク、バグダットの場所の確認、「拘束」、「身柄」の語句の確認ができます。 語句ノートを作るところまでできればよいのですが、まずはノートに書き出すだけでもよいでしょう。
漫画が好きならば「ちびまるこちゃん」の慣用句、言葉の漫画も有効です。必ずチェックすることを言い添えて渡してください。
国語の勉強には即効の方法はないと思います。「日々積み重ねる」ということが子どもの成長に大きくかかわっていくものと思っています。
参考になれば幸いです。 2004年4月20日記」
語彙は、読書、新聞、日常会話など普通の生活の中で見、聞きすることで自然と身についていくものでしたが、今は勉強として暗記しなければならなくなっています。核家族化が進み、様々な年代の人と話をする機会が少なくなっていることが、大きな原因になっているのでしょう。一昔前と比べると、話し言葉そのものが簡略化され、貧しくなっています。
子どもの語彙を少しでも増やすには、慣用句や四字熟語、感情を表す言葉、独特な言い回しなどを覚えさせなければなりません。慣用句や言葉の漫画やカード式のものをを利用するのもよいでしょう。いつでも手軽に読めて便利なものです。しかし、これも読ませっぱなしではなく、どこまで読んだか、どれを覚えたのかをチェックして、一つでも二つでも実際に使えるようにしなければ何にもなりません。こどもたちは、特に漫画で覚えた言葉遣いが問題文のなかにでてくると「これ知ってるよ」と得意げに言います。
そうして少しずつ語彙を増やしていきます。
上記の新聞の音読は5年生でも(4年生でも)可能です。親の手助けが必要ではありますが、難しいと思うようなことでも少し頑張らせれば、半年後にはつっかえながらも一人で読めるようになります。そして大人の新聞を読むということは、その年の子どもにとっては格好の良いことですので、弾みがつけばどんどん読むようになるものです。どちらにしても、中学生になったら新聞は読めて当然のことなのですから。
さらに大切なことは、読んだ新聞をノートに張り、知らない言葉を書き出し、語句ノートを作ることです。横罫のノートを縦に使い、下のページに新聞を張り、上のページに語句を書きます。上のページが、その子の語句の成長の足跡になるはずです。。
さらに、新聞を共通の話題としての親子の会話のチャンスも増やしてください。スポーツのことでも事件のことでも、対等な関係で話し合うことにより、子どもなりに自分の考えが言えるようになると同時に、親の考えも知る良い機会となります。
記述問題の解答に必要な語彙は、6年生にふさわしいもので充分です。むしろ詰め込んだ知識で、大人びた言い回しをした場合、言葉だけが浮いてしまうようなことは避けなければなりません。
読解に必要な語彙は、日常生活と新聞、ニュースそれに上記のことでカバーできるくらいで充分です。むしろ、文章の前後から読み取ることに重きを置くことが大切です。わからないから読み飛ばすと言う習慣をやめさせることが最も重要です。
6年生が、夏休み以降にまとめとして語句を学習する際には、四谷大塚の「四科のまとめ 国語」をお勧めします。同音異義語、同訓異字、四字熟語、対義語、類義語、慣用句、ことわざ、故事成語、語句の意味用法の「基本レベル」だけをコピーして冊子を作り、手軽に、繰り返し勉強できるようにしてあげてください。多くのものを覚えるよりも基本レベルのものを確実に覚えることの方が大切です。子どもにやらせっぱなしではなく、毎日12〜3分側について、必ずチェックして定着させます。語彙のみの暗記は学習方法としてはよくないのですが、その言葉を使って短文をつくることまでさせると、多くの場合長続きしません。覚えるために多くの語彙に触れるだけでも、言葉に敏感になるステップになるものと考えます。
A国語の読解に必要な力
語彙の不足と国語の点数の間には、たしかに相関関係はあります。しかし、そこにはもう一つ大きな問題、つまり、表面読み、飛ばし読み、いわゆる「答え探し読み」が存在していることを無視はできません。
あの短い時間内で、あれだけの字数のものを読まなければならないのですから、飛ばし読みをして、つじつま合わせをするしかないのでしょう。大人でもあれだけの問題を解こうとすると、時間内で満点をとることは難しいものです。
ですから、中学受験の国語の指導は、子どもたちの集中力をいかに高めるかが最大のポイントになると私は考えます。
読みの集中力を高める一つの方法が、目と手で読むことです。どのように手作業をさせるかは子ども一人一人少しずつ違います。子どもが問題を解く時の目の動き、手の動きを見て、段階に応じて指示を出します。目だけで読んでいる場合は多くの子が、設問を読んでは何回も本文に戻って、あちらこちら、つまみ読みをして答え探しをします。その時に、「気持ちの表れているところに「印つけ」をしてごらんなさい」と言います。すると子どもは、すっと姿勢を正して鉛筆片手に、「印つけをするところはどこか」という気持ちを持って読み始めます。ここで一歩集中できたわけです。
その場にふさわしい声かけをすることが、子どもを習慣から引き離してさらに、新たに集中することを体感させるものと考えます。「深く読みなさい。丁寧に読みなさい。」ではなく、具体的にその子にわかりやすい言葉、その子の心に沁みる言葉をかけなければなりません。指導者にとっても子どもにとっても、大変根気のいることです。日々の積み上げでしかないのです。
しかし、ある期間を経て、集中することを身に付ければ、さらには、日常生活やテストにおける時間の管理もできるようになるのですから、子どもの力には驚かされます。
そうなれば中学受験の経験で得るものは大きいといえるでしょう。
もう一つの集中力を高める方法は、つまみ読みをやめさせて、本文を一気に読み通させることです。(もちろん印つけをしながら)
これをするには、子どもは辛抱しなければなりません。設問が気になり、途中で見たくなってしまう気持ちをこらえなければならないのです。
問題として与えられる何千字という長文は、わき目をふらずに読まなければ、決して把握はできないでしょう。数年前までの問題は、傍線の前後を読むやりかたでも、そこそこの点数がとれたかもしれません。しかし最近は、そのようなテクニックというものでは太刀打ちできない良問が多いのです。ですから、時間内に集中することを覚える必要があります。
今まで、本文の傍線のところまで読んでは設問を見るというやり方をして、「どうも国語が・・・」というお子さんは、答え探しをしているだけで、本文を理解していないという場合が多いはずです。「印つけ」をしながら、読み通しなさい」と、アドバイスしてみてください。このことが大変有効であることは経験上わかってはいますが、とにかく習慣がつくまでには、時間がかかります。いつでも、どこでも、そのようにすることを言い、そうやっていくなかで時間内に終わらず、点数が下がることがあっても(必ず一時期そうなりますが)親子ともに辛抱して、しばらく続けてみてください。少なくても3〜4ヶ月はかかると思ってください。
B急に成績が下がるということ
もともと国語のできるお子さんが、あるときから目だって成績が下降する場合があります。これは、急に文章が読み取れなくなったのではなく、何か心に不安をかかえている場合が多いようです。自立して勉強しているのだけれど、理科、社会の勉強法がわからないという不安であったり、人間関係のストレスであったりとさまざまです。それを取り除いてあげればすぐにもとのペースにもどるものです。
国語という科目は教科の中で、最も精神が関係する科目といえるでしょう。