A 心情の読み取りについて                                   2005年9月

男の子さんのほうが、心情の読み取りを苦手とするお子さんが多いようです。
 電話帳と言われる過去問集の中から物語文を選び、心情の変化の設問だけをやります。問題 文も設問もコピーしてオリジナルのドリルを作ります。

  設問を頭に入れてから、本文を読みます。読みすすめながら気持ちを表す言葉を○で囲み、 余白に「うれしい」、「後悔する」のように気持ち言葉を書いておきます。その変化の原因 にも印しをつけてはっきりとさせます。主人公のどのような気持ちが、どんな出来事をきっ かけとして、どのように変化したかを常に意識させます。設問に入る前に、親子で文中の気 持ちの変化について話し合いをします。心情が明らかにされていないもの、あるいは、わか らない心情語は話の流れからくみ取ることを教えます。

心情の理解を苦手とする原因の多くは、自分中心の捉えかたをすることにあります。本来は登場人物の心情を読みとらなくてはならないのですが、「自分ならばこうする」、「自分ならばこんな気持ちになる」というところで解答をしてしまうのです。話の流れを正確に追い、気持ちの変化を余白にメモをし、はっきりとさせておくこと、また自分の気持ちではなく、登場人物の気持ちはどうなのだろうかということを常に意識させます。
 また、心情の理解を苦手にさせてしまう原因のもう一つには、心情を捉えるときには自分に置き換えて考えてはいけないという指導を受けた子ども達が、その言葉を誤解していることにあります。たとえば、「目をそらす」という言葉に表されている気持ちを考えるときに、自分ならばどのような気持ちのときに「目をそらす」のだろうかと考えることもしてはいけないと思い込んでしまっているのです。そうなると心情理解は大変難しいものになってしまいます。正しい指導であっても、この年代の子どもたちの「読む心」を閉ざしてしまう原因になることもあるということに、大人は気付かなければなりません。

 また、自分の気持ちの動きの中にも主人公と同じものがあることがわからない場合、あるいは、日常生活で他者の気持ちや自分の心を考えることが少ない場合も、物語文をむずかしく感じてしまうようです。問題文とは離れて、「走れメロス」、「一ふさのぶどう」、「おぼれかけた兄弟」のような、子どもの心を動かす名作を是非読ませでください。何か心に感じることがあるはずです。ふっと自分の気持ちが動くのを感じた時に心が成長します。それとともに物語文も苦手ではなくなっていくこともあります。

心情理解の練習をするとき、男の子さんは「そんな気持ち、わからない」と度々言います。それは照れもありますのでさらりと受け流して、心情の変化と状況について、よくよく討論をなさってください。ピンとはずれのことを言っても決して否定せずに、「ああ、なるほどね」と受けてあげて、しかし、正しいとらえ方をしっかりと伝えてください。心情の読み取りが少しできるようになる頃には、きっと精神的にも成長しているはずです。 親子で討論することで、自分以外の人の解釈を知り、一歩大人になるのでしょう。