6月9日、森上教育研究所主催、「わが子が伸びる親の『スキル技』研究会」第9回
「『音読をしながら、印つけとメモ書き』の実践」(4〜6年生対象)にいらしてくださいました低学年のお母様方、お約束の日が過ぎてしまいました。申し訳ありません。

低学年での学習の心構えを述べさせていただきます。

国語嫌い

 この時期の多くの子どもたちは、本を読むのが好き、書くことや話すことも好きです。きれいな目をキラキラさせながら生活しています。もちろん、自分は国語が苦手などとは考えてもいません。
 しかし、「そろそろ受験の下準備を」と親が意識して問題集をやらせ始めると、案外点数が取れません。お母さんの不本意な様子を度々感じると、子どもたちは「国語は嫌い」、
「国語は苦手」と言うようになっていきます。そうなると、とたんに文章を読むのが苦痛になり読めなくなります。早くからの読解訓練は思うほどに効果は上がらないものなのです。

先取り学習

先取り学習の効果が出ない理由は、文章には書き手の気持ちが十分にこめられているからです。文字面ではなく、文章の内容が読み取れるようになるには、読み手の心もある程度育まれていなければなりません。
 読解練習を始めるのは、体力がつき少し反抗的になり始める10歳頃からと私は考えています。むしろ、その時期が来る前に読解練習をさせると、文章を自由に読むことで培われる、子ども一人ひとりの心の成長の妨げになるのではないかと感じています。

本を読むことと読解

 読書や読み聞かせでは、自由に感じたり、考えたり、想像したりと、自分と本の自由な世界に浸る楽しさを経験します。
 読解では文章を自分流に読むのではなく、与えられた文章を丁寧に読み、情報をとらえ、その条件にそって正確に読み解くことが要求されます。
 
「自由と正確さ」という大きな違いがあるのですから、この二つは分けて考えます。しかし自由に読める力があるからこそ正確に読めるようにもなる、逆に、正確に読めるようになれば、さらに自由にも読めるということも言えます。

 
 読書が好きな子どもたちは幼い時は自由に楽しみ、時期がきて読解のやり方を学ぶと、さらに文章を深く読めるようにもなります。
 読書が嫌いな子どもたちは、幼いこの時期は何でも好きなものを読めば良いと思います。そして、時期が来たときに丁寧な読解法を教わることで読む力がつき、結果として読書の自由な世界に浸っていきます。それを信じて国語の土台をこの時期に築きましょう。

読解の土台作り

心と知識の土台として

もちろん読書や読み聞かせは大きな土台となります。

集中して、正確に読むために

@ 音読
 2冊の本にも書きましたが、特に低学年は、毎日10分程度の音読が必要です。必ずそばで聞いてあげます。読み終えたときに簡単に内容をチェックすることを習慣づけて、将来の読解に結びつけます。「感情をこめて、大きな声で」と要求すると、読む音のほうに気持ちが行きますので、文章理解がおろそかになります。気をつけてください

A 書写
 教科書の文章を2行だけ書写をさせます。句読点、1字下げも間違えずに正確に書き写させます。少しでも間違えたら消しゴムで消すのではなく、全文やり直しをさせます。そのための2行です。集中力と正確さを訓練します。

B 漢字練習
 分厚い漢和辞典を引く「1日1字だけ」の丁寧な漢字の勉強は、案外、小2〜3年生は喜んでやります。『お母さんが教える国語』76ページを参考になさってください。根気のいるこの勉強は、学習の基本の態度を養い、今後の学習に必ず結びつきます

正確に読む力と集中力をつけるこの3つの基本学習は、必ず親の目と耳で確認してください。やらせっぱなしでは何も身に付きません。学習に対する低学年での親の厳しさが、高学年の学習をスムーズにします。

時間を意識させるには

@  日常生活では「早くしなさい」と言うよりも、「今何時?」とうながすことで時間を意識させます。また、毎日の計算、漢字の練習時にタイマーを使うことも有効です。 ただし、スピードの練習ではなく時間を意識させることが目的です。

A  子どもの集中力は20分程度です。低学年の学習は20分を一区切りとし、机の前に長時間だらだら座ることのないようにします。

 大切なことは、決められた学習を時間以内に終えたときに、「今日は早く終わったからもう少ししなさい」と言わないことです。折角集中して課題を終わらせたのに、まだ時間があるからと学習を追加されると、子どもは集中して勉強をすると損をすると思ってしまい、集中する努力をしなくなります。やっとつき始めた集中力が積み上がりません。

思考力をのばすために

@  会話
 子どもの話を最後まで聞いてあげることは案外難しいことですが、実は大変大事なことです。また、「どうして?」と問いかけて説明させることや、「どう思う?」と問いかけて自分の気持ちを意識させることは、子どもの思考回路を活発にし思考力を高めます。また、読解にも大いに役立ちます。

A 「なぜ?」と問いかけること
 「なぜ」と聞いてきたときには、すぐに大人の解答をせず、「なぜかしら・・」、「なぜだと思う?」ともう一度話をかえしてみます。「なぜだろう」と常に問題意識を持って考える習慣は、子どもの思考力や好奇心を伸ばし、学習を受け身にしないことにつながります。

書く力をつけるために

@ 交換日記で文型を学ばせる
 低学年での親子の交換日記を気楽に継続すると、本当に良い思い出となります。その時に、「なぜ〜であるかというと、〜だからである」という書き方を学ばせます。中学受験の理科の記述にも必要な力ですし、中学入学以降の小論文を書くときにも大変役に立ちます。
 また、「まるで〜のような気持ちになりました。」というように、気持ちを何かにたとえることを覚えると、気持ちを楽に表せるようになります。

A  「つなぎことば」を、親子で遊びながら学ぶ
 だから(順接)、しかし(逆接)、そしてまた(並立・添加)、つまりなぜなら と書いたカードを作ります。短い文章を作り、つなぎことばのカードを提示し、その後の文章を考えさせます。

書くことの練習でもありますし、特に説明的文章の読解にも大いに役立ちます。

B  メモ用紙を利用して書く
 6枚のカードを用意し、それぞれにだれがいつどこでどうしたなぜどのようにと書きます。順番にカードを出し、カードの条件に沿ったことを一つずつメモ用紙に書きます。それを組み合わせて文章を作ります。

 例・ぼくは今日学校で 野球をした。 なぜかというと、久しぶりに晴れたからだ。ぼくはうれしくて小さい子どものように大声をあげながら走り回った。

家族で遊びながら書くことを学ぶ工夫ですが、これは物語文の基本的な読み方にもつながります。

ことばを覚えるために

時間のある低学年では遊びながら語彙を増やすことを心がけます。

@  日常生活では少し難しい大人のことばで話しかけるようにします。また、異世代の方と会話をする機会も必要です。

A  カルタやカードで遊びながら、ことわざ、慣用句を覚えさせます。意味を覚えるのはまだ無理ですから、音として記憶させていきます。案外、どんどん覚えます。学習漫画も手軽にことばを覚えるには便利です。

子どもが覚えたものはお母様が会話の中で使ってみてください。次第に使い方も覚えていきます

学習習慣

決められた時間に一定の課題を学習する習慣をこの時期につけることは、今後の学習に大きな影響を与えます。日々のゆるぎない家庭学習が、高学年での多くの困難を乗り越える学力と気力につながります。

3年生で「印つけとメモ書き」を始める場合

ご家庭のご判断でこの時期から練習をなさる場合は、まず、教科書の説明的文章、物語的文章で十分に「印つけとメモ書き」の練習をなさってください。教科書の文章は典型的でわかりやすいものが多いので、迷うことなく手に習慣がつき、読み方の基本を学ぶことができます。

物語的文章は気持ちを表すことばとつなぎことばに「印つけ」をすることから始めます。 説明的文章は、話題(何についての文章か。最初の段落に述べられている)をとらえることと、つなぎことばに「印つけ」をすることから始めます。作者の意見にも「印つけとメモ書き」ができるようなら、そのようになさってください。

大切なことは読解問題を解くときには全文を読み通してから、問題を解くという順番を守らせることです。短い文章のものが多いので、全文を丁寧に読まなくても解答できる子どもたちも多いのですが、この癖がつくと、必ず先で困難な壁にぶつかります。気をつけてください。

以上が低学年での国語の学習の心構えです。

受験までには、まだまだ時間があります。
 かわいい子ども時代はあっという間に過ぎて行きます。親子の体温をお互いに十分に感じながら、あたたかく、豊かな日々をお過ごしください。
 私たち大人も振り返ると、楽しいことであれ、悲しいことやつらいことであれ、この時期のできごとはずっと心に残っています。心を養う大切なこのとき、お母様方ご自身も十分に楽しみながら、慈しみ、育み、子どもたちが笑顔で過ごせるようにと心をお尽くしくださいますよう心よりお願いいたします。

低学年での学習の心構え

2009/06/22