通塾前の低学年 日常生活の中で心がけること
10歳前のこの時期は、学習習慣の基礎作りのみならず、子どもの安定した精神を育む大切な時期です。親鳥の羽のもとで、思う存分可愛がれる貴重な時です。また、生まれ月による心身の成長の差が大変に目立つ時期でもあります。他のお子さんと比べるのではなく、個々の発育段階に応じた養育を心がけましょう。
・漢字・計算の習慣付けをすること
「漢字、計算は朝食前に」、毎日、必ずさせます。 漢字、計算は一日の勉強の中にいれず、歯磨き習慣と同じ毎日の生活習慣と考えます。これをきっちり守れれば、親は子どもを必ず導けます。毎日のことですから忍耐が要りますが、ここで親の意志の強さをこどもに示します。時間は3〜4年生は漢字5分、計算5分ほど、5〜6年は合計20分程度です。短時間であっても、必ずしなければならないことをきちっとさせることが、高学年になったときの学習の姿勢に大きく関わってきます。5〜6年生は毎日、日曜日も欠かさずですから結構大変です。(3〜4年生は日曜日はお休みしても大丈夫です)。しかし、この学習の基礎・基本を継続させる強さが、子供の教育の大きなバックボーンとなります。
低学年の漢字練習は学校のドリル、市販のドリル、漢検のドリルなど何でも良いです。計算は百ます計算のドリルでも、公文でも何でもかまいません。易しいものの反復を毎日学ぶことに意義があります。
・考える力を養うこと
中学受験のマイナス面として挙げられるのが、「受身な子ども」を育ててしまうことです。確かに、受験期にノルマをこなすことを最優先すると、親や塾に言われるままの指示待ち型の子どもになる可能性があります。 そうならないように、日々の親子の会話では「〜しなさい」ではなく、「あなたはどう思うの」という問いかけを多くしてあげることが必要です。また、親が先回りし過ぎずに少し待ってあげることを心がけるだけでも、自分で考える場面は日常生活で増えるはずです。
また、低学年の時に机上の勉強ではなく、より多くの日常体験、経験をさせ、生活の上で考えることを身に付けさせ、自分の言葉で表現できるようにすることも大切です。科学館、博物館、実験教室、プラネタリウム、自然の中でのキャンプ・・・できるだけ多くのことを経験させ、本物を見る、生のものを見る(たとえば、リトマス紙がパッと赤に変わる場面など・・)経験をより多くさせてあげてください。
専門ではないのですが、母として心がけた家庭でできる理科実験をいくつか挙げます。 ※磁石・電流(電池・豆電球・ソケット、セットで売っている)
※電磁石(コイル・釘・電池・方位磁石で)
※砂糖と塩を溶かす
※レンズと鏡
※ジャガイモの発芽・・・
※光の屈折(水を入れたコップの中のお箸が屈折して見える・・・) このようなことを親は前もってある程度勉強し、子どもと一緒に楽しんでできるようにと工夫なさってください。失敗ももちろんありです。
この時期の多くの経験が知識の裾野となり、様々なことに興味を持ったり、あるいは疑問を持ってそれを解決しようとしたりすることによって、考える力が養われます。そして、それを自分の言葉で表現できるようにと導いてあげなければなりません。 ゆっくり時間をとり、子どもの話に付き合ってあげてください。言葉に詰まった時は、その子の言ったことをオオム返しにしてあげると頭の中が整理され、次の言葉がでてくるようです。また、疑問を持ったことを「なぜ?」と聞いてくる場合がありますが、大人の常識で結論を言ってしまうのではなく、子どもの考えがより深まるようなちょっとしたヒントを与えてあげるよう心がけてください。また楽しい遊びの中でも思考力は養われます。(将棋、パズル、読書・・)
・暗記だけに頼る学習を見逃さないこと
低学年の学習は、暗記でほとんどができてしまいます。子どもの正答を見て、当然理解もしているとものと思っていると、案外、理解ではなく暗記でこなしている場合も多いものです。学習時に「早く、早く」と追い立てたり、多くの量を押し付けるたりすると、子ども達は、この時期の勉強を暗記に頼るようになります。理解して身に付けなければいけないものも、暗記をすることでつじつま合わせをしてしまうのです。時間をかけて筋道立てて理解させるように、またそれを子どもに説明させるようにと心がけてください。答えが○か×かではなく、どうしてそうなるのかを自発的に答えられるように導いてあげてください。この時期の暗記傾向の勉強を見落とすと、学習の量も増え、急に難しくもなる5年生になってから成績が下がる場合があります。
・毎日、読み聞かせを必ずすること
本好きな子どもになるように、あるいは、国語力をつけるためにということ以上に、親子のスキンシップとしてこれほどふさわしいものはありません。しかし、この時間は、実は親にとっては疲労のピークの時間です。なるべく短いものを読もうとしたり、気持ちを込めずに読もうとしたりすることもあります。でも、もうひとふん張りして、子ども達を楽しい眠りにといざなってあげてください。この時期の読み聞かせほど子どもの心を豊かにするものはありません。ゆったりと親の肌のぬくもりを感じながらお話の世界を想像して眠りにつくことは、子どもの精神を充分に安定させます。
・ 読書好きにすること
読書が好きで、本の世界にひたりきることができることほど素晴らしいことはありません。読書が好きな子どもに育ってほしいと多くの方が望んでいらっしゃることと思いますが、なかなかうまくいかない場合もあります。手をかけ時間をかけて、読書を楽しめる環境をつくります。積極的に図書館に通い、自由に本を選ばせます。漫画以外のものならば絵本でも、図鑑でも何でも良いというように枠を広げます。教育的な配慮だけで図書館に連れて行っても、読書が好きではない子どもはいずれ拒否反応を示します。 選ぶ本が親の意向と違っても、読むジャンルが偏っても、それはたいした問題ではありません。本を読むことは楽しいこと、さらに、その時間は自分一人の自由な世界であることを感じさせてあげましょう。帰りがけに、おやつを買うというおまけつきででも図書館に足を運んでください。また、本を買う時も一方的に買い与えるのではなく、親として不本意であっても子どもに読みたいものを選ばせてあげてください。読むことに自由を感じ始めれば、そのうちに親が軌道修正をして読みのレベルを少しずつ上げられるようになることもあります。
・時間の管理をさせること
6年生になっても、 時計を目安に自分で行動をすることができないお子さんが多いようです。それがテストでの時間配分ができない原因の一つにもなっています。この時期から、目覚まし時計による起床の習慣をつけてください。親の声かけで行動をする受け身な生活ではなく、時間を自分で管理して生き生きと生活するようにと導いてください。
・手伝いをさせること
簡単な手伝いをさせます。それに対して必ず「ありがとう」を言い、忘れたり失敗したりしても怒らないようにします。自分が家庭の中で役に立っていると感じることは、子どもの心を安定させます。受験を中心に考えるとついおろそかになってしまうことですが、「これはあなたの仕事」というものを是非子どもに持たせてください。我が家では、二人の子どもに低学年から交替で「味噌汁作り」を仕事として受け持たせました。材料も選び、味噌も三種類をどのように使ってもよいという条件でした。包丁を使わせるので目が離せず、親にとっても負担でしたし、こどもにも不評な味噌汁作りの仕事ではありましたが、中高時代、キャンプでは大いに役に立ったようです。 もう少し簡単な仕事のほうが良いかもしれません。
・入学式の日など、節目ごとにしつけをすること
一年生の入学式の日に、学ぶ姿勢や目上の方に対する礼儀を教えます。その後の16〜18年の学生生活の第一歩として大変重要な一日です。また、学期ごと、夏休みの前、年の初めなど節目ごとに、日常の生活態度、学習態度へのしつけを、気持ちを新たにきちんとなさって下さい。 昨今、入学までにはひらがなも読め、ある程度の計算もできる子どもが多く、「もう知っている」という態度で授業を受けています。それが小学校低学年での授業がうまくいかない原因の一つにもなっています。しかし、実際は6年生の受験間際になってもひらがな、カタカナを正確に書けない子どもが沢山いるというのが子ども達の本当の姿です。すでに知っていることの繰り返しであっても、学校で学ぶ姿勢を一年生の時に身につけさせてください。
・集団効果を使って計算のトレーニングをすること
1年生の夏休みあたりから1年間ほど、競争効果のある集団での計算練習をなさることをおすすめします。しかし、何年もやる必要はありません。
・無理なく教養を身につけること
※ 大人の国語辞典、子ども用の百科辞典、地図帳、簡単な歴史年表、歴史漫画をリビン
グにおくこと
※ 4年生用の大きい日本地図を壁に貼り、ニュースにでてきた地名を親子で確認する
こと
低学年の過ごし方 |
2005年9月