@ 国語の点数が上がらない原因

このHPを開きましてから、「語彙不足」、「幼さ」が原因で国語の点数があがらないというご相談を多くの方からいただいております。

確かに、語彙は貧しくなってきていると言えます。しかし多くの答案を分析すると、その原因のほとんどは、「語彙不足」ではなく、「丁寧に読んでいない」ために文章を読み落としていることや、あやふやな語彙を文脈から読み取ることができていないということにあるということが浮き上がってきます。ですから、「語彙が不足しているから」という言葉は、大人の逃げの言葉なのではないかという思いもいたしております。「丁寧に読む」ということ自体あいまいな言い方ですし、確かに実際の指導も大変難しいのですが、そこを避けて「子どもの語彙不足」という言葉でくくってしまっては、問題の解決にはなりません。

また、「精神的に幼い」ということもよく言われますが、12歳の子どもたちは中学生のようなお子さんから、まだあどけない様子の可愛いお子さんまで、外見では確かに差があります。しかし内面は皆、幼いところもあれば大人びたところもある12歳の少年、少女なのです。その子の一面だけを見て「幼いから読解が・・・」という言葉でくくってしまってはなりません。幼いから文章が読めないのではなく、「丁寧に読んでいない」から読み落しがあり、答えられないということの方が現実なのです。さらに、幼いから恋心がわからないということも言われますが、この年で恋心がわかるほうがおかしいでしょう。恋心であろうと、普通の心情であろうと、物語の読み取りにはかわりがありません。気持ちの変化とそのきっかけの出来事を丁寧に読み取れればそれでいいのです。

  

A 「丁寧に読む」ということ

「丁寧に読む」とは、与えられた多くの情報から重要な言葉、文章を選び抜く力であり、また、心情とその変化を出来事にそって読み取る力です。自分なりの読み方で楽しむ読書とは違い、書かれていることを思い込みではなく、正確に読み取るということです。
そのためには、「目と手」で読むことが必要になります。ポイントに「印つけとメモ書き」をし、さらに音読をすることにより、あやふやな語彙を具体的に、また、わかったつもりでいる文章を明確なものにしていきます。

  


B 「丁寧に読む」学習法

中学受験の訓練として、語彙を覚えることと共に、目と手を使った「丁寧な読み」を練習なさることをお勧めいたします。
読み取りミスの原因のほとんどは「飛ばし読み」です。限られた時間内で「答え探し」をしながら長文を読むと、どうしてもそうなります。子どもをじっと観察しますと、たった一行でさえも途中で文章から目を離していることが多いのが現実です。

=具体的に=


 1) 「印つけとメモ書き」について

文章には、物語文的なものと説明文的なものがあり、それぞれポイントの押さえかたが違います。

物語文的文章

説明文的文章  

       尚、物語文、説明文についてはこちらもご参照ください。


 2) 問題の取り組み方について
設問から先に読むやり方は、6年生の夏過ぎからの取り組み方とします。それまでの練習段階では、本文に「印つけとメモ書き」をして読み通し、それから設問を読み、解答するという順序で練習します。     2008・11・29 追記

問題文を読んで、傍線のところまできたら設問を見て解答するというやり方もありますが(簡単な問題はそれでもよいのですが)立ち止まって考えなければならない問題に頭を使っているうちに、子どもたちは今まで読んだ部分を忘れてしまいます。最後までどうにかたどりついたけれど、何が書いてあったのかわからないということになります。細切れに文章を読んでも、それを頭の中で組み合わせることは12歳の子どもには難しいことなのでしょう。ですから、「文章全体を通して〜」という記述問題はお手上げになってしまいます。

設問から先に読む場合

設問を読み、「何について、どのようなことが聞かれているのか」を確認します。
設問で作問者の意図をつかむということも言われますが、それこそ12歳の子どもには無理です。設問の裏を読むということではなく、設問がその文章を読む手がかりになることに気付かせることが大切なのです。本文のどこにポイントを置いて読めばよいかを、設問を通して考えさせることが「丁寧に深く読む」ことの支えになっていきます。

設問を先に読み、本文の傍線の
前後だけ読むというやり方をするお子さんもいますが、これは正した方が良いです。易しい問題はこのやり方でもそこそこ点数が取れますが、このやり方では読み取る力は付きません。(読解力もあり、器用なお子さんの中にはこのやり方を正さない方が良い場合もあります。)

本文から先に読む場合   4年生(初心の)の学習法   

C 読むスピード

一気に読み通した子どもが、「よし、わかった」と言って解答用紙に向かうようになればもう大丈夫です。設問にちらちら目をやる「答え探し読み」が終わったということです。あいまいな読みから具体的な読みに変化したということです。
文章が読めるようになり、わかるようになった時に、初めてスピードを上げる訓練ができます。読むスピードをつけるには鉛筆で文章を追い、そのスピードを徐々に速めるとよいようです。集中力がいっそう高まります。鉛筆を持つ手を遊ばせていたり、鉛筆をくるくる回したりしているのは集中していない証拠です。でも、それを見てすぐに「ほらっ。集中していない。」と怒らずに、「鉛筆で文章を読みなさい」と言ってあげてください。子どもの悪い癖を正す時はそれを指摘して悪いものをインプットすることよりも、少しでも良い方向に向かった時に大げさに褒めてあげることのほうが効果があります。

  


D 親子の読み合わせでの訓練 (2004年 夏休みの学習より ・5〜6年生対象)

今までやった問題の中であまり長くない問題をコピーして、三枚用意してください。時間制限をしないで、まず一回目は音読をしながら「印つけとメモ書き」をします。(親御さんは同じものを側で黙読してください)読み落とし、「印つけ」の不足やあいまいな言葉をアドバイスしながら丁寧に読みます。読み終わったら親子で段落、場面ごとに何が書いてあるのかの確認をします。物語文ならば、気持ちの変化とそのきっかけになった出来事を押さえ、説明文ならば段落ごとの要点、作者の意見、結論をおさえます。2回目は黙読をしながらもう一度「印つけメモ書きと」をします。読み落しがないか確認をします。これは、自分が今まで読み飛ばしていたことに気づかせることが目的です。この作業が終わったらもう一度設問の内容を二人で確認し、その後、解答を進めます。

子どもとの読み合わせをする前には、親は予習をして文章を理解し、問題も解いておき、効率よく練習できるよう準備することが必要です。また、読み合わせを始めると、意外なほど読めていないことに気付き、がっかりするとともに感情的にもなる自分を少し抑えなければならない場面もあるでしょう。親子でこの壁を乗り越えたときには、答え探しをしながらのあいまいな読みが正されていることでしょう。短いものでも良いですから、(長い文章をいくつかの段落に分けて、何日かにわたって読むということでも良いと思います。)しばらくは毎日やることをお勧めします。2・3週間でリズムがつかめるようになるでしょう。時間はかかりますが、根気よく繰り返してください。早ければ2ヶ月もしないうちに定着し始めます。   

説明的な文章については、多くの問題をやるよりも、同じものを何回か繰り返すことの方が効果が上がります。段落ごとの読み分けを何回も丁寧にすることによって、論理の構成を体感し、理解できるようになるからです。
物語文的文章は同じものにこだわる必要はありません。

また、その日の訓練を始める前に、前日読んだ文章の大筋を話し合うことも大変に良い訓練になります。最初は言えないものですが、(その場合は軽く説明してあげてください。)そのうち少しずつ言えるようになります。理解した文章は覚えているものです。しかし、この確認作業は厳密にやると、今日の課題に入る前にすでに険悪な雰囲気になってしまいますので、そうならないように、さらっとなさってください。

どの科目の勉強もそうですが、前日やったことをざっと繰り返す、あるいは、ミス問をやるという作業は、ほんの数分しかかからないのですが確実に定着率が高くなります


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E 過去問
について  (2004年夏休みの学習より)

6年生の夏休みあたりから志望校の過去問に取り組みますが、読み取りの訓練が定着していないのならば、夏の段階では急いでやることはありません。とにかく文章を読めるようにすることを最優先してください。

過去問をやり始めると、子どもたちは志望校の問題傾向をはじめて、はっきりと知り、志望校への意識がかなり高くなります。一回目から時間通りにやり点数もつけますが、45〜50%出来れば充分です。ミス問の直しを必ずやり、自分の苦手分野を意識させ、それを正すにはどうすればよいかを考えさせてノートに書かせます。その場合、「抜き出しのミスをしない」というような書き方ではなく、「字数で探すのではなく、設問の条件をもう一度読んでから本文に戻ると正答できる!」というように具体的で前向きな書き方をします。そして、毎回問題をやる前に音読してそれを意識させます。

志望校の過去問を繰り返すうちに、子どもたちはその学校の問題傾向を自分でつかんでいきます。身体で覚えるということでしょうか。この時期になると毎年子どもの持つ不思議な力を感じます。

過去問は繰り返しやるのでコピーし、解答用紙は拡大して実物に近いものにします。

尚、過去問について詳しくは、「2004年 秋の学習」をご覧ください

  

F     記述の練習

記述の練習は、選択肢問題の選択肢を隠して記述問題とするのが手軽にできる方法です。キーワードは選択肢のなかにあるのでそれを目安に、つながりの良い文章へと導きます。
あいまいな読みをしているうちは記述を難しいものと感じるでしょう。「丁寧に読む」訓練をして正確に読めるようになると、自分の印つけ、メモ書きをヒントにして書くことができるようになります。使い慣れない言葉ではなく、自分の語彙の範囲で堂々と書くことが大切です。身についていない難しい言葉遣いをしようとすると、本当に書きたいことが伝わりにくくなります。

 ・ 短い一文を積み上げて書き、慣れてきたらつなぎ言葉を使うこと。
 ・ 一文は長過ぎないようにすること
 ・ 主語と述語をなるべく近くに置くこと
 ・ 「なので」、「〜したんで」「あと
」という話し言葉ではなく、書き言葉で書くこと
 ・ 「どのような気持ちですか」という問いに関しては、まずその感情がプラスの感情かマイ
   ナスの感情なのかはっきりさせて、+、−と設問の余白に書き、それに添って書くこと
 ・ キーワードは、文中に繰り返し出てくる、あるいは、言い換えてでてくる言葉であるこ
   とが多いので自分が印つけをした部分に注目すること

過去問集の記述の解答は大人が書いたものですから、内容、キーワードがあっていれば12歳にふさわしい書き方のほうが良いでしょう。解答にそったキーワードを使って、親御さんがかみ砕いた言葉で模範解答を書いて、お子さんに示されるのが良いと思います。

  

G  読書と読解

読書量の多い子は読解問題ができると言われますが、そうとは言えないようです。読書の好きな子どもの中には、読解問題も大変よくできる子どもがいるというのが事実でしょう。読書は、人それぞれの読み方や感じ方でその人なりの世界を楽しむものです。楽しい、面白い筋だけを追っても良いのが読書です。

それに対して読解問題は、切り取られた文章をいかに正確に読み取るかが問われるものです。文章に書いてある現実を分析し、客観的に事実を読み取らなくてはなりません。読書を楽しむ読み方とは違い、
12歳の子どもに「文章を深く正確に読む」ことが要求されているのです。むしろ国語力というよりも、丁寧さと集中力が要求されているのではないかと私は考えます。

「丁寧に読む」訓練をこの時期にすることによって、読書自体の質が、単に「面白い、楽しい」と言う枠を超え、「理解し、発見し、不思議に思い、さらに、心を感じる」というように変化していく子どもも多いことも事実です。以前よりも読書自体を好きになったというこどもの声が何よりの証拠です。

しかし、私自身実際は、「もっとゆっくり心で読ませたい」というのが本心でもあります。

=最後に=

誕生から3歳までは、お子さんを慈しんでお育てになったことと思います。無条件に子ども中心の生活をしなければなりませんでした。そこから10年ほど経ち、心身ともに成長したお子さんは親の手から離れ、自己を形成する時期にさしかかっています。しかし、身体は成長していても気持ちはまだまだ甘えていたい不安定な時期です。親の支えが必要なのです。親の一言が大きく響きます。目先の偏差値、周囲からの煽りに惑わされて、ついつい親がのめりこんでしまい、学習の「基礎、基本」を身に付けさせるという本来の受験の目的を忘れてしまうと、そこから親子の辛い苦しみが始まってしまいます。

何のための受験なのかを忘れずに、今少し辛抱して子どもに寄り添ってあげてください。あの可愛い10年前と同じに、できる範囲で子どものために時間を割いてあげてください。子どもは親を必要としています。生意気なことを言ってもまだまだ可愛いところが残っているこどもに、幼い頃にかけたあの慈しみの心を充分に注いであげてください。今、ひと時の貴重な時間です。

も親として我が子の受験にかかわりました。先輩として心からお願いいたします。

真剣に親が子どもに関わったことは、必ず子どもの心を大きく成長させます。受験期をそのように過ごした子どもたちは、安定した心で思春期を迎えることができるでしょう。





中学受験  国語の学習法

@ 国語の点数が上がらない原因

A 丁寧に読むということ

B 「丁寧に読む」学習法  具体的に

C 読むスピード

D 親子の読み合わせでの訓練

E 過去問について

F
記述の練習


G
読書と読解